AIの進化で「行政書士の仕事がなくなるのでは」と不安を口にされる方が増えています。しかし、実際にはAIの登場によって行政書士の立ち位置が整理され、むしろ専門性の高い領域が改めて評価される流れが生まれています。本記事では、AI時代に生き残る行政書士の代表的な3つの立ち位置(専門特化型・伴走型・自動化型)を整理し、開業時にどの方向性を選ぶべきかを考えるための材料を提供します。
AIに代替されにくい役割とは何か
AIに代替されにくい役割には共通する特徴があります。第一に、定型化が難しい判断を含む業務。第二に、依頼者との継続的な信頼関係に基づく業務。第三に、責任を引き受ける立場でしか遂行できない業務です。この3条件を満たす業務は、どれだけAIが発達しても最後まで人に残る領域になります。
逆に言うと、単純な書類の清書や定型フォームへの転記といった作業は、今後さらにAIに置き換えられていきます。開業時の方向性を考えるときは「AIができる業務」ではなく「自分にしかできない業務」を軸に据える意識が大切です。
立ち位置1|専門特化型(難易度高・稀少業務)
特定の難易度の高い業務分野に深く特化し、その領域での第一人者を目指す立ち位置です。建設業許可の複雑案件、在留資格のレアケース、産業廃棄物処理業、医療法人設立、特殊な許認可など、案件数は少ないが単価が高く、判断を含む業務が該当します。
適性
一つのテーマを長く掘り下げることが苦にならない方に向いています。書籍・判例・行政通達を読み込み、自分の中で論点を整理していく作業を楽しめるかどうかが分かれ目です。
典型的な業務選び
許可要件が複雑で、個別の事情に応じた判断が求められる業務が中心になります。許可の可否が要件判断に大きく依存する分野、特殊な事業者を対象とする分野、法改正の影響が大きい分野などが候補です。
◼︎ 注意点:専門特化は、初期の案件数が限定的になるため、軌道に乗るまで時間がかかります。開業資金と生活費の見通しを余裕をもって立てておく必要があります。
立ち位置2|伴走型(相談相手として継続関与)
個別の書類作成より、依頼者の事業や生活に継続的に寄り添う立ち位置です。法人の顧問的な関わり、在留資格の長期的なフォロー、相続・遺言などライフイベントに紐づく業務、事業者への申請支援の継続関与などが典型です。
適性
人と話すことが好きで、相手の状況を丁寧に聞き出せる方に向いています。書類を作るだけの仕事ではなく、依頼者の将来像を一緒に考える姿勢が軸になります。
典型的な業務選び
法人向けでは顧問契約、個人向けでは相続・家族信託・遺言といったライフイベント領域、外国人向けでは在留資格の継続フォローなどが該当します。1件で完結せず、次の相談につながる導線を作るのが特徴です。
◼︎ 注意点:伴走型は信頼関係の構築に時間がかかる分、一度築いた関係は長く続きます。紹介が紹介を呼ぶ構造を作れるかどうかが、安定期に入るまでの鍵になります。
立ち位置3|自動化型(AI活用で量をこなす)
AIやITツールを積極的に活用し、比較的定型的な業務を高効率で数多くこなす立ち位置です。単価は抑えめでも件数と回転率で事務所を維持する形で、薄利多売という言葉よりも「仕組みで回す事務所」と表現するのが適切です。
適性
ITツールの導入や業務フローの改善に興味があり、仕組みを作ることが好きな方に向いています。1件の深掘りよりも、100件を効率よく回す設計に価値を見出せるかどうかが問われます。
典型的な業務選び
自動車登録、定型の各種届出、小規模補助金の申請支援、定型的な契約書作成、営業許可の更新業務などが該当します。テンプレートとAIを組み合わせて処理速度を上げ、問い合わせから納品までを短時間で完結させる設計が求められます。
◼︎ 注意点:自動化型は、仕組みを作るまでに初期投資(ツール・テンプレ・業務設計)が必要です。単に案件を受けるのではなく、事務所のオペレーションを設計する視点を持つことが重要です。
3つの立ち位置の組み合わせ
実際の事務所運営では、3つの立ち位置を完全に一つに絞る必要はありません。むしろ、中心となる立ち位置を一つ決めたうえで、他の2つを補助的に組み合わせる設計が現実的です。
- ◼︎ 専門特化型を軸に、補助業務として伴走型の顧問を組み合わせる
- ◼︎ 伴走型を軸に、定型業務を自動化型で効率化する
- ◼︎ 自動化型を軸に、難易度の高い案件だけ専門特化型として個別対応する
◼︎ 大切なのは「自分の事務所の中心軸は何か」を自分の言葉で説明できる状態にしておくことです。中心軸があれば、日々の判断も料金設計も迷いが減ります。
AIで代替されないために開業時に選ぶ戦略
AI時代にもう一歩踏み込むなら、開業時点で次の3つを意識的に選んでおくことをおすすめします。
- ◼︎ 自分にしか語れない得意分野を1つ決める(経歴・関心・人脈のどれかで差別化する)
- ◼︎ 依頼者との継続接点を作る仕組みを用意する(メルマガ・顧問・セミナー・LINE公式など)
- ◼︎ AIを自分の事務所の中にどう組み込むかを設計する(AI禁止ではなく、活用ルールを決める)
この3つを決めておくと、AIの進化がどこまで進んでも、自分の立ち位置が崩れにくくなります。
10年後を見据えたポジション取り
最後に、10年後の行政書士像を自分の中で一度描いてみてください。AIが今よりさらに普及し、定型業務のほぼ全てが自動化された未来でも、自分が胸を張って「これは自分の仕事だ」と言える領域は何か。その問いへの答えが、開業時に選ぶべき立ち位置の手がかりになります。
3つの立ち位置のどれを選んでも、地道な積み重ねが必要なことは変わりません。ただ、最初に軸を決めておくかどうかで、3年後・5年後の景色は大きく変わります。AIの進化を脅威ではなく「自分の立ち位置を明確にするきっかけ」と捉え、開業初日から自分の方向性を言葉にしておきましょう。
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