業務別ヒアリングシートを用意することで、面談の質と受任率が上がる理由と、現場で使えるテンプレ項目です。開業当初、面談のたびに聞き漏れて再連絡していた方も、1枚のシートを用意するだけで驚くほどスムーズになります。
ヒアリングシートがある事務所とない事務所の違い
ヒアリングシートのない事務所では、面談の会話が行き当たりばったりになりがちです。依頼者から「では、これで進めてください」と言われたときに、実は要件を満たすかどうかの判断材料が揃っていない、というケースが発生いたします。
一方、業務別のヒアリングシートを1枚用意しておくと、必要な情報を網羅的に聞き取れるだけでなく、依頼者にも「この先生は業務のことを分かっている」という印象を与えられます。この最初の信頼感こそが、見積提示後の受任率に直結いたします。
とくに開業1〜3年目は、面談の経験値が絶対的に不足しています。シートは「聞くべきことを忘れない道具」であると同時に、「面談の流れを自動で設計してくれる台本」でもあるのです。
業務共通の基本項目
どの業務でも必ず聞いておきたい基本項目は、次の5ブロックに整理できます。
依頼者情報
氏名・住所・連絡先・生年月日・法人の場合は所在地と代表者名を確認いたします。後の委任契約書・委任状・請求書で必要になる情報を、最初に一気に押さえておくと二度手間を防げます。
依頼経緯
「今回、行政書士に依頼しようと思ったきっかけは何ですか」という質問です。紹介者がいるのか、HPを見て問い合わせたのか、過去に自分で申請しようとして挫折したのか、で必要なケアが変わります。
希望納期
いつまでに許可・認可・書類が必要なのかを確認いたします。納期が逆算的にタイトな案件は、見積金額に特急料金を上乗せする根拠にもなります。
予算感
ここは聞きにくいと感じる方が多いですが、「ご予算のイメージはありますか」とストレートに伺って問題ありません。予算と提示金額の乖離が大きい場合は、面談の終盤で価格交渉に時間を割く必要があります。
懸念点
「今、一番気になっていること・不安に思っていることはありますか」と聞くと、依頼者の本音が出てきます。この懸念点を解消できるかどうかが、受任の分水嶺です。
業務別のカスタム項目
基本項目に加え、業務ごとに追加で確認しておきたい項目があります。主要業務について代表的な追加項目を挙げます。
建設業許可
経営業務管理責任者の経験年数・専任技術者の資格または実務経験・財産的要件・営業所の所在地と賃貸借契約の有無・現在の許可の有無など。要件充足性を面談で仮判定できれば理想的です。
在留資格
国籍・現在の在留資格・在留期限・学歴・職歴・雇用予定企業情報・収入見込みなど。不許可歴がある場合は必ず把握してください。業務独占の関係で弁護士・税理士の業域に踏み込まない点にも注意が必要です。
補助金
事業内容・直近の決算状況・自己資金・補助対象経費の候補・申請予定の補助金名・採択後の実行体制など。採択率は申請者の事業計画の質に大きく左右されるため、事業実態も丁寧に聞き取ります。
法人設立
設立予定の法人形態・商号候補・事業目的・資本金・発起人・決算月・本店所在地・役員構成など。登記は司法書士の業務独占領域のため、行政書士は定款作成までという業際を面談時に明確に伝えます。
相続
被相続人の情報・相続人関係・財産の種類・遺言の有無・相続人間の合意状況など。紛争性のある案件は弁護士法72条との関係で行政書士が扱えないため、入り口で判断する必要があります。
質問の順序設計
良いヒアリングシートは、項目の順序まで設計されています。おすすめの流れは次の4ステップです。
1. ラポール形成
本題に入る前に「お忙しい中ありがとうございます」「本日はどちらからお越しですか」といった柔らかい会話で緊張をほぐします。1〜2分で十分です。
2. 情報収集
基本項目と業務別項目を、シートに沿って淡々と伺います。ここで雑談を挟むと時間が伸びてしまうため、淡々と進める意識が重要です。
3. 深掘り
気になる回答・矛盾しそうな点・リスクのある点に戻って掘り下げます。「先ほどの〇〇ですが、もう少し詳しく教えていただけますか」という形で具体化します。
4. 提案
最後に、今日の情報を踏まえた進め方・見込み費用・納期のイメージを簡潔に伝えます。その場で見積を出さなくても、「明日には正式な見積をお送りします」と宣言することで次のステップが動き出します。
受任率を上げる2つのコツ
シートの設計だけでなく、現場で意識したいコツを2つお伝えします。
1つ目は、依頼者の発言を必ず復唱することです。「〇〇ということですね、承知いたしました」と繰り返すだけで、依頼者は「ちゃんと聞いてもらえている」と感じます。これが信頼につながります。
2つ目は、できないこと・注意点をその場で正直に伝えることです。業際・難易度・不許可リスクを隠すと後でトラブルになります。逆に、最初に誠実に伝えることが受任率を高める、という現場感覚は多くのベテランが口を揃えるところです。
面談後のフォロー
面談が終わった直後、できれば24時間以内に次の3点をメールまたはメッセージでお送りいたします。
- ◼︎ 本日のお礼
- ◼︎ 面談で決まった次のアクション
- ◼︎ 見積書または正式な回答のお届け予定日
この3点が揃ったフォローをできる行政書士は、残念ながらまだ多くありません。だからこそ、ここを徹底するだけで競合と大きく差がつきます。
このテーマのスキルを行政書士開業キットで使う
本記事で解説した内容は、行政書士開業キットに含まれるスキル群で実際に動かせます。
開業準備から実務・集客・AI活用まで、26スキル+30本の解説記事であなたの開業を支援します。
※本サイトは行政書士開業キットの公式ミニサイトです。