行政書士開業キット 解説記事 / 06 実務

行政書士が扱う契約書10種|業務委託・売買・賃貸借・代理店契約まで

依頼頻度の高い10種類の契約書について、条項の勘所と作成時の確認ポイントを整理します。

06 実務 gyosei-keiyaku-template

契約書作成は、行政書士の「権利義務・事実証明に関する書類の作成」業務の中核をなす実務です。ただし扱える契約の範囲は弁護士法72条との関係で明確な線引きがあり、どの契約でも受任してよいというわけではありません。本記事では、行政書士が実務で遭遇しやすい契約書10種について、各契約の性質・必須条項・作成時の確認ポイントを整理します。

行政書士が契約書を扱える範囲と前提

行政書士法第1条の2により、行政書士は他人の依頼を受けて報酬を得て、権利義務・事実証明に関する書類を作成することができます。契約書はその典型例で、日常的な商取引・業務委託・売買・賃貸借など幅広い場面で受任できます。一方で、すでに発生した紛争の解決を目的とする示談書や和解書、訴訟に関連する文書の作成は弁護士法72条の規律を受けるため、受任の可否を慎重に判断する必要があります。

本記事で紹介する契約書のうち、和解契約書などの紛争解決系については、受任の可否や関与の深さに注意しながら読み進めてください。

契約書10種の全体マップ

行政書士の実務で登場頻度が高い契約書を10種類に分類しました。最初にざっと一覧で把握しておきます。

1 業務委託契約書

仕事を外注・受託するときに使う最も汎用的な契約書です。業務の範囲・成果物の納品条件・報酬・検収・著作権の帰属・秘密保持・契約解除の条件を明確に定めることが重要です。請負契約と準委任契約のどちらに近いのかで、瑕疵担保・善管注意義務の考え方が変わる点に注意しましょう。報酬の支払時期と遅延損害金、中途解約時の清算方法も盛り込みます。

2 売買契約書

動産・不動産・債権などの売買の合意を定める契約書です。目的物の特定・代金額・支払方法・引渡時期・危険負担・契約不適合責任・所有権移転時期が基本の条項群となります。不動産売買については宅地建物取引業法・登記実務との関係から、司法書士・弁護士との連携が前提になる場面が多いため、受任範囲を明確にしたうえで進めます。

◼︎ 注意点:不動産の所有権移転登記は司法書士の業務独占領域です。売買契約書の作成までは行政書士で対応できますが、登記部分には踏み込まないようにします。

3 賃貸借契約書

不動産・動産の貸し借りを定める契約書です。目的物・賃料・支払方法・賃貸期間・更新・敷金礼金・原状回復義務・禁止行為・契約解除などを規定します。居住用不動産の場合は借地借家法の適用を受けるため、普通借家か定期借家かで条項の組み立てが大きく変わります。事業用物件の場合は用途・営業時間・設備負担の扱いが論点になります。

4 代理店契約書

メーカー・サービス提供者と販売代理店の間で結ぶ契約書です。取扱商品の範囲・販売地域・独占か非独占か・価格決定権・販売促進義務・報酬(販売手数料)の計算方法・在庫リスク・契約終了後の扱いを明確にします。独占代理店契約は競争法(独占禁止法)との関係もあるため、条項設計時に配慮が必要です。

5 業務提携契約書

企業同士が共同で事業を行うときに結ぶ契約書です。提携の目的・役割分担・収益配分・費用負担・知的財産権の扱い・共同開発成果物の帰属・秘密保持・契約終了時の取扱いを規定します。提携内容が抽象的なままだと後日のトラブルに直結するため、できる限り具体的な行動レベルまで落とし込むのがコツです。

6 秘密保持契約書

取引開始前や業務提携の前段階で、営業秘密や個人情報を守るために結ぶ契約書です。秘密情報の定義・目的外利用の禁止・開示範囲の制限・保管方法・返還または廃棄・有効期間・違反時の損害賠償を規定します。短いながらも内容次第で実効性が大きく変わるため、雛形を使い回すのではなく案件ごとに定義条項を調整することが大切です。

7 譲渡契約書

債権・知的財産権・事業・株式など、権利や資産の移転を定める契約書です。譲渡対象物の特定・対価・引渡方法・譲渡時期・表明保証・第三者への通知手続き・競業避止義務などが主要な論点となります。株式譲渡や事業譲渡のような規模の大きい案件では、税務・労務・会社法の専門的論点が絡むため、税理士・司法書士・弁護士との連携体制を前提に組み立てます。

8 雇用契約書

使用者と労働者の間で労働条件を定める契約書です。業務内容・就業場所・労働時間・休日・賃金・契約期間・退職・解雇事由を記載します。雇用契約書の作成自体は行政書士でも取り扱えますが、就業規則の作成・届出や社会保険関連の手続きは社会保険労務士法第2条の定める業務独占に該当します。雇用契約書からそこに踏み込まないよう、提携社労士と役割分担を最初に明確にしておきましょう。

◼︎ 注意点:同じ契約書でも、労務コンサルティングとして労働条件の変更指導を行うと社労士の業務に抵触するおそれがあります。助言は事実関係の整理にとどめ、労務顧問業務は社労士に引き継ぐのが無難です。

9 和解契約書

当事者間の争いを終わらせるための合意を定める契約書です。紛争の内容・解決条件・支払金額・支払時期・清算条項・守秘義務などを規定します。和解書の作成は弁護士法72条との関係で特に注意が必要な領域で、すでに紛争化している案件を報酬目的で取り扱うことは行政書士の業務範囲を越える可能性があります。紛争性がない事後確認的な合意の書面化に限定するなど、関与の範囲を明確にしたうえで受任可否を判断しましょう。

◼︎ 注意点:紛争性がある案件では、弁護士への紹介・引き継ぎを前提にするほうが安全です。無理に行政書士の手元で抱え込むと、非弁行為と評価されるリスクがあります。

10 遺産分割協議書

相続人全員の合意により、相続財産の分け方を定める書面です。相続人の特定・相続財産の特定・分割方法・代償金・清算条項・署名押印・印鑑証明の添付を整えます。不動産の名義変更には司法書士の登記手続き、相続税申告には税理士の関与が必要となるため、全体をワンストップで案内しつつ、登記と税務は専門家に引き継ぐ構造が標準形です。

全契約書に共通する必須条項

扱う契約書の種類は違っても、次の条項はほぼすべての契約書で共通して登場します。雛形を持つ際は、この共通条項を土台として業務ごとの特則を積み上げていくと、質の揺らぎを抑えられます。

電子契約への移行の流れ

近年は電子契約サービスの普及により、紙と印鑑から電子署名とタイムスタンプへの移行が加速しています。行政書士の実務でも、クライアントに電子契約の利用を提案する場面が増えました。電子契約を導入するメリットは、押印手続きの省略・郵送コストの削減・収入印紙の不要化(電子的交付の場合)・版管理の容易さなどです。事務所としてどのサービスを推奨するかを事前に決めておき、顧客に対して導入支援まで案内できるようにしておくと、契約書業務の付加価値が高まります。

◼︎ 注意点:電子契約の法的有効性は、電子署名法・電子帳簿保存法などの要件を満たしていることが前提になります。契約書の性質によっては書面交付義務が定められている場合もあるため、業法と個別法令の確認を欠かさないようにしましょう。

契約書作成時の確認プロセス

どの契約書を作るときも、同じ順番で確認するプロセスを事務所として持っておくと品質が安定します。おすすめは「ヒアリング・目的整理・ひな形選定・条項調整・依頼者確認・最終化・調印・保管」の8段階を事務所の業務フローに組み込むことです。各段階でチェックシートを運用すれば、確認漏れが起きにくくなります。

行政書士開業キットでの対応スキル

本記事で解説した10種類の契約書の作成・条項設計・業際判断は、行政書士開業キットの「gyosei-keiyaku-template」スキルで実務プロセスとして動かせます。契約書の種類選定から必須条項の生成、電子契約への展開までをカバーする構成です。

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